契約で不利になる側がストロングスタイルで臨むことはないという話
《武井咲の所属事務所がお詫び行脚》という記事を見て
みんな「女性が子供産んだのに違約金なんて女性の権利が!女性蔑視!差別!」
私「了承した時点でそれはどんな理不尽な契約でも守らんといかんやろ。了承してんだから。ええでって言うとるんやから」
私は女性蔑視してんのか…?— なや (@miyamiya098) 2017年9月3日
奨学金問題の話とかでもそうですけど、契約上の違約が発生するような件において「契約したのだからそれに従うべきである」「どんな不利な契約だろうと結んだからには違約側に非がある」みたいなしばき上げ主義の人が少なからずいらっしゃるんですけど、契約ってそんな「原契約は神聖にして侵すべからず」みたいなもんじゃないんですよ。契約当初からの状況の変化によって条項や条件について変更を加えるなんてのは珍しくありません。人倫にもとるような契約条項なんてのは無効になったりもしますし。(ちゃんとしたお付き合いの上での妊娠がイメージを損なうみたいなものいいは、まさに人倫にもとる話ですね)。一切の変更を許さない原契約を遵守しようとする気持ちは尊いですけど、それは人に求めないでください、という。
私の働く不動産業(正確には宅建業)なんかは、業者側が知識格差をいいことに消費者を食い物にするというのを防ぐために、かなり消費者保護に寄った業法になっていて、契約書に書いてあるから何でもその通りにしろみたいなのをしてはいけないことになってるんですね。もちろん(ごく一部の例外を除いて)各種人権に反する条項なんてもってのほかです。そういう業界で働いてると「契約条項で何でも人をしばれる」みたいな『甘っちょろい』考えには賛同しかねるところです。
たとえば武井咲さんのように妊娠・出産がらみを不動産業にあてはめると、女性単身者向け賃貸物件には大抵「入居者以外の者を居住させてはいけない」という契約条件があったりするわけですが、その単身女性入居者が妊娠出産したら「同居者なので」と違約金なり違約による即退去になるかつったら、人道上それはしないわけですよ。
「いや武井咲さんは、高いお金もらって企業CMに出ているから一般人より厳しい制約をかされて当然だ」というご意見になるんでしょうが、そもそも放蕩の限りを尽くした結果の妊娠とかいうのでもない限り、女性の妊娠が企業CMのイメージの保持に著しく支障をきたすとかいう理屈をどうやって構築してるのか、そういうの差別心以外で説明できるんですかね。私はできないと思いますけど。理があるとすれば製薬会社のCMは妊娠時の服薬の絡みで支障があるといえるくらいですか。
契約条項至上主義みたいな人、自分が茨の道を歩むのは勝手にしていただければいいですし、詐欺的契約に騙されないといいですね。
追記
権利擁護の本職はどう言ってるのかなあと思って調べたら、日弁連もイメージキャラクターに武井咲さんを起用しているそうです。
日弁連は、公式イメージキャラクターの武井咲の妊娠・結婚を、むしろチャンスと捉えるべき。世間が注目しているいまこそ、権利擁護かくあるべし、と世間に広く宣伝して欲しい。
— 渡辺輝人 (@nabeteru1Q78) 2017年9月4日
なんの振り返りもせずに漫然と武井咲のポスターをもう1年継続することを決定した日弁連は、直ちに武井咲の事務所にカチこんで違約金取るべき
— 弁護士 井垣孝之 (@igaki) 2017年9月2日
弁護士にもいろんな人がいますね。
さらに追記
妊娠した学生を中退させる「法」とかいうの、日本国のどこにあるんですかねえ。妊娠による不利益の防止を定めた法なら存在するのは知ってますけど。法とは国家が私達に「こう生きて欲しい。そうすれば国はあなたを守ります」という願いです。
その願いや交換条件を破る可能性が高い行為をしながら、でも堂々と国に保護を求めるのは如何なものかと。
逆に、法を守って生きる人達がなぜ無法に合わせなければならないのか、と考えてみて欲しい。— サンソン (@docodalou) 2017年9月3日
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