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2011年7月22日 (金)

【雑誌】 エンターブレイン 『サラブレ 2011年8月号』&「そして誰も走らなくなった」管理人の解答編

サラブレ 2011年8月号 [雑誌] サラブレ 2011年8月号 [雑誌]

エンターブレイン  2011-07-13
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この記事は『サラブレ 2011年7月号』の、読者参加型競馬ミステリークイズ「そして誰も走らなくなった(出題編)」をお手元に置きながらご覧いただくことをお勧めします。内容は、8月号に掲載された当ブログ管理人の解答を大幅に加筆修正したものとなっています。金子刑事の報告が終わったあたりからの分岐で、出題編からの引用は二重鉤括弧と赤字で表示をしています。

 

 

――金子刑事の報告を聞き終わった太田一は脳内で流れるヘヴィメタルに乗せて、軽く頭を振る。金子刑事が戸惑って問う。
「あの。その。いったい何をされているんですか」
太田一がぴたりと頭を止めて応える。
「私の灰色の脳細胞が活動を始めました」
そう答えるとやおら懐から便箋とペンを取り出し猛烈な勢いで何かを書き留めていく。書き終わったものを封筒に入れ、金子刑事に渡す。
「実はちょっと気になったことがありましてね。そこが事件の真相につながる糸口ではないかと」
「というと?この中身がそうですか」
「おっと、それはまだ開けないでください、今から説明しますので」
金子刑事が封筒を開けそうになるのを制して続ける。
「これだけ詳細に事件を記した最上さんが、なぜだか『事件との関わりを否定』することについては曖昧な記述を繰り返していることです」
「私には明確な否定にしか見えませんが」
太田一は金子刑事の言を聞いているのか聞いていないのかも定かでない様子で日記を捲り、その箇所を読み上げる

それはいいけれど。と、杏奈は思う。誰もオーナーのことをよく知らないのね

「まずここです。ここを『(私以外の)誰も』と仮定した場合、後の記述についても矛盾なく説明が可能になります」
「結構強引な仮定のような気がしますけども」
金子刑事のもっともなツッコミにも太田一は構わず続ける。

杏奈の足下から恐怖と混乱が襲う。何これ、どういうこと?島のどこかに殺人犯が隠れているの?(中略)残ったスタッフ5人の誰かが犯人?違う、5人じゃない、私を勘定に入れてどうする。

「醍醐さんにつけられていた傷は4つ。もし、浅い傷と深い傷をつけた人物が別だったら?浅い傷をつけた人物にとって、醍醐さんの死が予想外のものだったら?たとえば、最上さんが醍醐を刺したものの気絶しただけで致命傷にならず、呼ばれて行ったときに自分がつけた以外の傷が致命傷になっていたとしたら。この場合、最上さんは『殺人犯』ではありません」
「太田一さん、それはさすがに曲解しすぎというものですよ」
半ば呆れ顔の金子刑事。
「調教されるはずだった馬についての記述にも違和感がありました」

醍醐がゲート練習させると言っていたロンリーデイズ号。閉所恐怖症なのか、ゲートに入ると立ち上がる、暴れる、心身を喪失してしまう馬だ。

坂の下、闇夜のカラスよりはいくぶん明確なシルエットで青鹿毛マサチューセッツ号がたたずんでいる

「ロンリーデイズ号・マサチューセッツ号、この二頭については五島場長から最上さんに説明されたくだりがありません。なら、なぜ説明されていない馬の特徴を最上さんが知っているのか。」
「チームですから、他の馬について聞かされていたとしてもおかしくないのでは?」
「たしかにおかしくはありませんね。ですが、聞かされていなくても知ることはできるのです。例えば……最上さんが馬を用意した人物だとしたらどうですか?」
「そりゃ辻褄は合いますけども。第一、島や馬を買ったり、定期便でない船を用意する金を最上杏奈が持ってますかね?」
「しかしそれなら、聞かされていない馬の性格も、夜の闇の中『青鹿毛』だとわかったのも説明できます。それから、ちょっともどって東海林さん殺害のところは……」

「僕も最上さんもキッチンには立ち入っていない。……最上さん、そうだよな」杏奈は、ぶんぶん、首を振る

「この場面でキッチンへの出入りは『毒を盛らなかったこと』の否定にはなりません。東海林さんだけがワインを飲むと全員が知っている以上、グラスに毒を塗るとか、目を放した隙に毒を盛るとかは容易にできますのでね」
ぺらぺらとページを捲る音だけが部屋に響く。
「それから五島場長殺害のところは『もういや。殺人鬼がいる』ですね。それから稲荷まささん殺害は……『白々しい。自分が殺したくせに』と」
次に読み上げる箇所を探しながら太田一は軽く頭を揺らす。
「なぜ、両名の死亡について自分で確認しなかったのに死んでいると信じられて、それが殺人だと断定できたか。ここまで不自然なほど自らの関与についてだけぼかして書いているのはなぜか」
太田一が視線を向けると、金子刑事が思わずゴクリと唾を飲む音が聞こえた。
「それを殺人と知る立場にあって、自らは手を下さない人物。刑事さんなら分かりますよね?」
「まさか、依頼殺人!?」
目配せをし先を続ける太田一。三萩野殺害のくだりを読み上げる。

2頭の縦列調教。杏奈は、他馬が後ろにいると集中力を欠くメロディフェア号で前を行く。三萩野は、他馬が前にいると無駄な闘争心を発揮するファーストオブメイ号で後ろから追いかける

ふぅ、と息を入れる。

杏奈がひたすらに逃げる。調教なんて、できっこない。集中力のない牝馬に集中力のない私が乗って。競馬でマイナス掛けるマイナスはプラスにならない。気性改善なんか論外だ。もういい、逃げる。後ろを走るのは大量殺人鬼だ。毒薬、拳銃、注射針、何でもござれの凶器を用意した極悪人だ。杏奈は脂汗を流して、逃げる。こんなに緊張した調教は初めてだ、きっと最後になるんだろう。どうにかコースを無事に2週して、下馬する(以下略)

「最上さんは縦列調教で前を走って、極度の緊張の中にありました。『ツインターボをとことん弱くしたような』メロディフェア号なら、バテて2周するにはかなり時間がかかったでしょうね。下手したら3周したのすら気づかなかったかもしれない。そして次です」

寝藁の上にピストル。さっきは、なかった

「この二人のうち後ろにいた三萩野さんなら2周回ってるうちに『さっきは、なかった』拳銃を置けます。おそらく弾丸はペイント弾でしょう。死んだと思わせておいて、額にかかっていた文章どおり最上さんを溺死させるための時間を稼ぐ。相互監視が維持されていると準備もままならないですからね」
「しかし、なぜそんなまわりくどいことを?」
「それが依頼者の条件だったからでしょうね。指定通りの方法でなければ報酬を払わないとか」
太田一は一呼吸おいて続ける。
「依頼者・軍司琵琶雄=最上杏奈、実行犯・三萩野翔太。この二人の、互いに顔を知らない共犯であり、さらに三萩野翔太と思われる人物は三萩野翔太本人ではない」
あっけにとられる金子刑事を尻目に滔々と語り始める太田一。
「事件のあらましはこうです。依頼を受けた三萩野(仮)は、本物の三萩野さんを殺して島に乗り込み、依頼通り殺人をこなす。一方、最上さんはまさか本当に依頼が実行されるとは思わず驚愕。さらに自身が依頼主であるということを伝えてやめさせるすべもなく、また依頼によって関係者を殺してしまったという罪の意識から自殺。三萩野(仮)は最上さんが倒れているのを発見し、銃痕が偽装ではないか確認するため傷を拭う。そして最上さんの自殺によって計画通り依頼がこなせなくなったことに焦り、最上さんの日記を読んで自らも逃げられないと悟ったのでしょう。もしかしたら、依頼主が最上さんだというのにも気づいたかもしれませんね。追いつめられて、残ってる日記の記述通りの場所と方法で自殺。馬に紐か何かで銃をくくりつけておいて引き金を弾けば、驚いた馬が勝手に放牧地まで走って行ってくれます。日記の記述と現段階で見つかっている物証を合わせて、矛盾しない範囲で考えれば大方こんなところでしょう」
太田一の畳み掛けるような言葉に圧倒されていた金子刑事が何かに気づいたか言葉を発する。
「しかし、銃痕の偽装が鍵なら五島が犯人だと考えても成り立つのではないですか?最上杏奈の自殺も実弾がなければ無理ですし」
「銃が複数存在しない、ということも日記には書かれていないので……」
太田一が言い終わるかどうかというその時、深谷刑事が部屋に飛び込んでくる。
「師匠!最上杏奈の部屋、ベッドの下から日記が見つかりました!」
師匠って。君は弟子か。太田一は内心ツッコミながら金子刑事が紙片を読み終わるのを待つ。
「太田一さん、どうやら見立ては間違いだったようですよ」
金子刑事がやや意地悪気な笑みを向ける。しかし太田一はどこ吹く風。
「ところで、金子刑事。先程の封筒は気になりませんか?」
「気になるもなにも、さっきお話は伺いましたし……」
露骨に面倒臭そうな表情を浮かべる金子刑事を促す太田一。渋々開封して中身を読み始めた金子刑事は、時折最上杏奈の日記の後半部分と便箋を見比べながら驚きの色を露にする。
「太田一さん、これは一体……!?最上杏奈の日記とほとんど内容が同じじゃないですか!馬名が全てビージーズの曲名にちなむこと、軍司琵琶雄も五島文太もイニシャルがB.Gなこと、明確に死亡の確認をされていない五島文太が犯人であろうこと……」
「まあ、文面を曲解せずに解釈すれば当然ですね」
「当然って太田一さん。それじゃ、さっきまで延々やってたのはなんだったんです」
「いやあ、あまりに推理する余地がなかったもんだからつい出来心で叙述トリックやりたくなって。ははははは」
「ははははは、じゃないですよ。こっちは事件解明につながると思って真剣に聞いてたのに」
「これは失敬。でも、私は一度も他の人物の犯行を排除しませんでしたよ?」
あっ、と声に出しそうになる金子刑事。
「言ったでしょう?『叙述トリックやりたくなって』と」
「確かに、これは一本とられましたな。ははははは」
軍馬島に二人の笑い声がこだましたのだった。

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